白内障治療
白内障とは
目の中の水晶体は、入ってきた光が眼底(網膜)で焦点を結ぶためのレンズの役割を果たしており、そもそもは無色透明で、光をよく通します。しかし、主に加齢によって水晶体のたんぱく質は変性し、徐々に白く濁ってきます。この状態を白内障と呼びます。
80歳を超えるとほとんどの人が白内障
白内障の患者さんはたいへん多く、早ければ40歳頃から発症し、80歳を超えると、程度の差こそあれ、ほとんどの人が白内障の状態にあると言われます。
なお、加齢以外の原因としては、全身疾患(糖尿病など)、薬(ステロイドなど)の副作用、外傷、紫外線などが挙げられ、若い方でも発症することがあります。
白内障の症状
白内障は、初期の段階では自覚症状に乏しいケースが多く、自分では気づきにくいものです。しかし、病状の進行とともに下記のような症状が見られるようになってきます。
こうした症状を覚えたら、一度眼科を受診しましょう。
目のこんな症状はご相談ください
- 目が霞んで、辺りが白く霧がかかったように見える
- 明るいところでは、かえって目が見えにくい
- 太陽光や街灯、車のヘッドライトなどの光をひどく眩しく感じる
- 視力が低下して、小さな文字が読みにくくなる
- メガネの度が急に合わなくなる など
白内障の治療
経過観察
症状が軽度で日常生活に支障が無いようなら、経過を観察します。目薬(水晶体のたんぱく質の変性を阻害して水晶体が白く濁るのを抑制し、白内障の進行を遅らせる薬)による治療を行うこともあります。
手術療法
白内障の症状が進み、日常生活に不便を感じるようになったら、人工のレンズ(眼内レンズ)を入れる手術を検討します。基本的に局所麻酔下で行い、手術時間は10分程度です(※個人差があります)。
日帰りで手術を受けて頂くことが可能です。
白内障の手術について
黒目(角膜)の端の方を2ミリほど切開し器具の出入口を作ります。水晶体は袋に包まれており、濁るのはその中身だけなので、袋の前面(前嚢)に丸い穴を開けて、そこから専用の器具を入れ、濁りを超音波で砕いて吸い出します。
きれいに袋だけ残すことができれば、その中に人工の眼内レンズを入れて手術は終了です。順調に行けば所要時間はだいたい10分位ですが、白内障がひどい場合はもう少し時間がかかります。
眼内レンズとは
水晶体を取ってしまうと強い遠視になり、分厚い眼鏡をかけないと物がはっきりと見えない状態になります。そのため、代わりに人工の水晶体(眼内レンズ) を入れます。
しかし、眼内レンズには調節をする機能がありませんので、残念ながら遠くも近くも両方ともはっきりと見えるようにはできません。遠くが良く見えるように度数を合わせた場合は近くを見るための老眼鏡が必要ですし、近くに合わせた場合は遠く用の眼鏡が必要になります。目標の度数をどちらに合わせるかはこれまでの患者さんの状態などから決めていきます。
眼内レンズの度数を決めるために黒目の表面のカーブの具合と目の長さを測りますが、多少誤差が生じることがあります。誤差がかなり大きい場合は、眼内レンズを入れ替える場合があります。
手術の危険性
白内障手術は昔に比べると機器や技術の進歩により、ずいぶん安全な手術になってきました。しかし、どんな手術でも合併症が全く起こらないとはいえません。ときには、下記のような合併症を生じることがあります。
- 水晶体の袋に穴が開いて、水晶体の濁りが目の中に落ちてしまう。
- 水晶体の支えが弱くて眼内レンズが入れられない。
- 目の奥で網膜剥離や大きな出血を起こす。
- 傷口からバイ菌が入る。
これらの合併症が生じた場合には、それに対処するため手術時間が余計にかかったり、術後視力の回復がほかの人より遅くなります。しかし、視力が戻らないような重篤な合併症はめったには起こりません。
白内障を放っておくと
白内障は進行するとだんだん固くなったり、真っ白になったりして手術が難しくなっていきます。また、急に緑内障などの合併症を生じることもあります。
進行した白内障では手術時間が長くなったり、合併症の起こる確率が高くなってしまいます。白内障はある程度早い段階で手術した方がより安全ですし、患者さんにとっても負担が軽くてすみます。
手術後の回復
手術翌日にガーゼの眼帯がはずれ、よく見えるようになってきます。しかし場合によってはもう少し時間がかかることもありますし、もともとの他の病気のために思っていたほど視力が回復しないこともあります。また、眼帯がはずれたあともしばらくは傷口が弱いので、一週間程度は、眼を強く押さえたり、ぶつけたりしないよう気をつける必要があります。
当院では日帰りでの白内障手術を行っております
日帰り手術の適応
比較的若く、体力が充実しており、他に病気のない方は、「日帰り手術」が可能です。入院先の慣れない環境下で体調を崩してしまったりする懸念のある方は、「日帰り手術」を受けたほうが、心身への負担が少ないケースもあります。下記の条件を満たす方は「日帰り手術」の適応になります。
【日帰り手術の条件】
- 内科的に大きな問題が無く、手術を受けても体に特別な影響の無い方
- 通院が可能な方(術後の経過を診察するために、定期的な通院が必要になります)
- 目に他の重い合併症(角膜混濁・重度の緑内障や糖尿病網膜症など)が無い方
- 術中・術後の諸注意がきちんと守れる方
人工水晶体(眼内レンズ)の2つのタイプ
単焦点眼内レンズ(保険適応)
*眼鏡をかけても構わず、より鮮明な視力を求める方に適しています。
単焦点眼内レンズとは、その名の通り、ピントが1点にだけ合うレンズのことです。
通常、人間の目は近くにも遠くにもピントを合わせることができます。しかし、この単焦点眼内レンズは焦点が1点だけですから、近くか遠くのどちらかに合わせる必要があります。したがって、近くにするか、遠くにするのかについては事前に医師と話し合いの上、決めておきます。
ピントが1点であることから生じる不便については、近視用の眼鏡や老眼鏡で補うことになります。しかし、レンズ代も手術費用も医療費はすべて保険適応ですから、経済的負担は少なくて済みます。
多焦点眼内レンズ(自費)
*なるべく眼鏡に頼りたくないという方や、仕事や趣味、スポーツなどを行う際に近くも遠くも眼鏡無しで見たいという方に適しています。
近くか遠くのどちらか1点にのみ焦点を合わせなければならない単焦点眼内レンズと違い、多焦点眼内レンズは遠近両用のレンズです。そのため、近くと遠くの2ヶ所にピントを合わせることができるので(2焦点タイプ、他に中間距離にもピントの合う3焦点タイプもあります)、眼鏡の使用頻度を減らすことができます。しかし、健康保険が適用されないため、医療費はすべて「自費」になり、単焦点眼内レンズに比べ、経済的負担は大きくなります。
また、薄暗い場所や夜間にライト等を見ると、光の周辺に輪が掛かって見えたり、眩しさを感じたりすることがあります。(ハロー・グレア現象)
●多焦点眼内レンズについて 詳しくはこちら