糖尿病網膜症・糖尿病黄斑浮腫
糖尿病網膜症・糖尿病黄斑浮腫とは
長期にわたり血液中のブドウ糖の過剰な状態が続くと、全身の血管に様々な障害が現れ、糖尿病による三大合併症(腎症、網膜症、神経障害)を引き起こします。
糖尿病網膜症は、血液中のブドウ糖の過剰な状態が続くことによって網膜の血管が損傷を受け、血管が詰まったり、変形したり、出血を起こすようになったりした状態です。単純網膜症から増殖前網膜症、増殖網膜症へと進行します。
一方、糖尿病黄斑浮腫は、網膜症の症状の一つで、損傷を受けた血管や血管の瘤から血液成分が漏れ出し、網膜内に水が溜まったような状態になります。
ものを見るのに最も重要な「黄斑」に水が溜まると、視力が下がったり、ゆがんで見えるようになります。この状態を「黄斑浮腫」と呼びます。
糖尿病網膜症の検査
視力検査
他の目の疾患と同様に、視力検査はやはり重要な検査です。特に矯正視力は診断において重要で、矯正視力が1.0以上出ないようなら何らかの異常があると推測します。
眼底検査
目の奥に光を当てて網膜を直接観察し、網膜やその血管の状態を調べます。散瞳(点眼により瞳孔を大きくすること)のうえ検査をすると、微細な出血も把握できます。
蛍光眼底造影検査
腕の静脈から蛍光色素の入った造影剤を注入しながら眼底カメラで目の奥の血管を観察し、血管の形状や血液の流れ、網膜の血管からの血液成分のもれなどを調べます。
血の巡りが悪い(虚血)と新生血管と呼ばれる異常血管が発生します。
蛍光眼底造影検査は新生血管の検出にも有用です。
光干渉断層計(OCT)検査
眼底に近赤外線を当て、その反射波を解析して、層構造をした網膜の断層像を描出し、網膜の状態を調べます。黄斑浮腫の検出に非常に有用です。
糖尿病網膜症の治療
「病期」によって症状も治療法も異なる
糖尿病網膜症の病期は、その進み具合によって大きく3段階に分けられ(単純・増殖前・増殖)、治療法もこの病期に応じてそれぞれ変化してきます。また、視力低下を引き起こす「糖尿病黄斑浮腫」(物を見る際にとても重要な働きをしている黄斑にむくみが生じた状態)は、これら全ての病期で起こることがあります。
単純糖尿病網膜症(初期の網膜症)
糖尿病網膜症の予防は可能
糖尿病網膜症が出てくるには、糖尿病になってから数年から10年程度の時間が掛かることが知られています。糖尿病になったからと言って、すぐに目に異常が生じるわけではありませんし、しっかりと血糖をコントロールしていれば、糖尿病網膜症を予防することは十分に可能です。 そして、重度の糖尿病網膜症になって失明したり、失明の危険が迫ったりといった事態を避けるためには、糖尿病の患者さんは定期的に眼科を受診し、眼底検査などを受け続けることが大切です。
糖尿病黄斑浮腫の治療
黄斑に血液成分が溜まって、むくんだ状態を「黄斑浮腫」と言いますが、その治療法には
- 1.抗VEGF治療
- 糖尿病黄斑浮腫にはVEGF(血管内皮細胞増殖因子)という物質が関与しています。そのためVEGFの働きを抑える薬剤を目に注射することで、黄斑浮腫を改善します。
- 2.ステロイド治療
- 糖尿病黄斑浮腫には炎症が関与しています。炎症を抑えるステロイド剤を白目に注射することで黄斑浮腫を抑えます。
- 3.レーザー治療
- 糖尿病によって出来た、網膜血管の小さな瘤から血液成分が漏れて黄斑浮腫になる場合があります。その小さな瘤をレーザーで焼くことで血液成分の漏れを止めることが可能です。
- 4.硝子体手術
- 目の中は硝子体と呼ばれる、透明なゼリー状のもので満たされています。
この硝子体は黄斑に接着して引っ張る(牽引する)ことで、黄斑浮腫を悪化させる働きがあります。さらには前述のVEGFは硝子体に溜まりやすいため、黄斑浮腫悪化の原因となります。
すなわち手術によって硝子体を切除することで、黄斑への牽引を解除し、さらには目の中に溜まっているVEGFを減らすことで黄斑浮腫を改善することが可能です。